サステナブルファッションとは? マテリアル

繊維の特徴を知って、賢く選ぶ!麻編

前回のコットン編に引き続き、繊維の特徴を知ろう!の第2弾です。今回はコットンと同じ植物繊維の「麻」の特徴についてみていきます。

結論から言うと、夏の普段着にもってこいの繊維で、消臭効果等も期待できるすごいやつです。そして、何よりコットンに比べて環境負荷がとても少ないので、クローゼットのサステナブル化のために積極的に取り入れたい繊維です。

 

繊維の中の「麻」の位置

麻は植物からとれるので、「植物繊維」の仲間です。

麻の種類

実は、麻は植物の葉や茎からとれる繊維の総称のことで、特定の植物からとれる繊維を指しているわけではありません。麻は「靭皮(じんぴ)繊維」と「葉脈繊維」とに大きく分かれます。葉脈繊維は字のごとく、葉っぱから採れる硬い繊維です。その硬さから織物には向いておらず、ロープ等に使用されています。一方で、靭皮繊維は茎のすぐ内側にある柔らかい繊維です。麻の衣類はこの靭皮繊維から作られています。

今回はこの靭皮繊維の中から、衣類に使用されることの多い、「リネン(亜麻)」、「ラミー」、「ヘンプ(大麻)」の特徴を見ていきます。

UnsplashMatteo Paganelliが撮影した写真

リネン(亜麻)

リネンはフラックスという植物からとれる繊維です。

現在リネンの生産高は90%以上をヨーロッパが占めています。ヨーロッパの中でもトップ2がフランスとベルギーです。

特徴

① 吸湿力と発散力に優れている

汗を吸収しすぐに乾かしてくれるので、暑い日でも服が肌にくっつかず不快感がありません。

② 通気性と保温性に優れている

リネンの繊維は空洞になっているため、夏は熱を逃し涼しく、冬は熱を保温し温めてくれます。

③ 耐久性

濡れると強度がより一層増すので、繰り返しの洗濯に強いです。

④ 汚れが落ちやすい

リネンの繊維にはペクチンと呼ばれる汚れが付着しにくい成分が入っており、汚れを落としやすいというメリットがあります。また、抗菌性も持ち合わせているので頻繁に洗濯をしなくても清潔に使うことができます。

リネンは夏に着て涼しいというだけでなく、実は保温効果や抗菌作用、また、汚れを落としやすいという嬉しいメリットがたくさんある繊維です。

 

デメリット

① しわになりやすい

② 30℃以上のお湯で洗うと縮みやすくなる

③ 毛羽立ちやすい

 

これらの特徴やデメリットから、リネンが向いている衣類や製品は、

季節を問わず普段着(特に、汗をかく夏は活躍間違いなし)

ベッドシーツ

環境に優しい点/問題点

次にリネンは環境に優しい繊維なのかどうか見ていきましょう!

結論から言うと、リネンは環境負荷が最も少ない繊維の一つです。なぜ環境に優しいのでしょうか。

1.水の使用量が少ない

コットンはTシャツ1枚分のコットンを作るのに2700リットル必要とする一方で、フラックスは6.4リットルのみです。水をほとんど必要としないので、水やりをせず、自然の雨のみで育つと言われています。

2.農薬不要/少量で栽培可能

フラックスは雑草よりも早く成長すると言われており、100日程度で3m~5mまで成長し、地深く根をはります。とても生命力が強い植物なので、コットンに比べると少ない農薬で栽培可能です。

3.丈夫で長持ち

リネンはとても強度のある繊維なので、リネンから作られた衣類は丈夫で長く愛用することができます。

 

以上から、コットンに比べて環境負荷が低いことは明らかです。

しかし、環境負荷が全くかからないということではないことも理解する必要があります。

まず、本来は農薬や化学肥料等を使わなくても育つ植物と説明しましたが、生産者によっては、その生産スピードを上げるためにこれらを使用することがあります。また、天然繊維のため自然に還りますが、染められていたり、漂白されているものは100%自然に還るわけではありません

また、その生産量は化学繊維やコットンと比べるとかなり少ないのが現実です。優等生リネンがあまり普及していない理由は、手間暇がかかりすぎ、値段が高くなってしまうためです。

ラミー

ラミーとは苧麻(ちょま)という植物から採れる繊維です。中国、ブラジル、フィリピンなど温度・湿度が高い地域で栽培されています。この中でも特に中国産が多く、全体の90%を占めています。

収穫できる回数が多く、中国では年に3~4回、フィリピンでは5~6回収穫されます。

特徴

① 吸湿性・発散性・通気性に優れている

この点はリネンと同様で、汗をかいても布が肌にくっつかないので着心地がよいです。

② 耐久性

天然繊維の中でも最も耐久性がある繊維のひとつと言われています。高温でも洗濯可能なため、業務用のユニフォームにも利用されています。

リネンと同じく汗を吸って素早く乾かしてくれるので、夏の時期にはとても重宝する繊維です。また、強度があるので、長く使いたい衣類におすすめです。

参考 ラミー(苧麻 )について :日本麻紡績協会

デメリット

① しわになりやすい

② 毛羽立ちやすい

③ 繊維が粗めなので、肌への刺激が強い

 

以上の特徴やデメリットから、ラミーに向いている衣類は

多湿で暑い時期の普段着

です!

 

 

 

環境に優しい点/問題点

ラミーはリネンと同様に本来は環境負荷が低い繊維です。

1.水の使用量が少ない

2.農薬不要/少量で栽培可能

3.丈夫で長持ち

しかし、各農家の栽培方法により環境に優しいかどうかというのは変わってしまうため、一概に環境に良いとは言い切れません。

例えば、生産者によっては、茎から繊維を取り出す際に薬品を使っている場合があり、その水が河川や土壌へ流れ出て環境問題を引き起こしている可能性があります。伝統的な方法でこのプロセスを行うことは可能ですが、時間を要するため、大量生産で利益を重視している生産者は薬品を使う傾向にあります。

参考 Ramie Fabric - What is Ramie? Sustainability, Pros and Cons:trvst.world

ヘンプ(大麻)

「大麻」と聞くと、麻薬を想像してしまいますね。しかし、大麻の一種であるマリファナと異なり、ヘンプには気分の高揚を促す成分がほとんど入っていません。なので、ここでお話するヘンプはマリファナとは切り離して考えてくださいね。

また、ヘンプは麻の一種なのですが、衣類のタグに「麻」と表示されることはありません。というのも、日本では家庭用品品質表示法により、リネンとラミーのみを「麻」と表示してよいことになっています。なので、ヘンプが使用されている場合「ヘンプ」あるいは「指定外繊維」と表示されます。

それでは、ヘンプの特徴を見ていきましょう。

特徴

① 吸湿性・発散性に優れている

この点はリネンやラミーと同様で、汗をかいても布が肌にくっつかないので着心地がよいです。

② 耐久性

リネンもラミーも耐久性に優れていますが、ヘンプはさらに強度があるのだとか。コットンよりも3倍も強度があります。

③ 抗菌性・消臭作用

ニオイのもととなる雑菌を抑制する効果があり、頻繁に洗濯をする必要がありません。

④ UVケア

ヘンプの紫外線防止率は90%以上と言われています。夏の強い味方となってくれますね!

次にデメリットです。

デメリット

① しわになりやすい

② 染色された衣類は色が落ちやすい

 

環境に優しい点/問題点

ヘンプはコットンに取って代わる環境に優しい繊維として、最近先進国を中心に注目を集めています。そのように言われる理由はいくつかあります。

1.水の使用量が少ない

2.農薬不要/少量で栽培可能

3.不良土でも栽培可能!かつ土壌改善にも効果あり

あまり栄養のない土でも栽培することができ、ヘンプが植えられた土壌を解毒し土壌侵食を防ぎます。

4.繊維以外にも余すことなく使いきれる

例えば、種は食用やオイルとして活用されます。

 

ただし、ヘンプは糸になるまでたくさん加工工程があり、手間がかかります。しかも、収穫した半分以上が糸になれず繊維ロスとなってしまいます。(リネンやラミーの繊維ロスは10%から20%ほど)

また、比較的粗い生地なので化学繊維などと混ぜて使われるケースが多くあります。

参考 Hemp Fabric; What is it and is it Sustainable? : Going Zero Waste

まとめ

  • この記事を書いた人

キャペル

「Sustainable Fashion」について学ぶ過程をみなさんと共有したいブログです。
ベルギー在住で、現在オンラインでパリの大学院に通っています。
(専攻:Fashion Marketing & Sustainability) ヨーロッパのアパレル&繊維の業界団体でサーキュラーエコノミーのプロジェクトに携わっていました。

-サステナブルファッションとは?, マテリアル