最近、「サーキュラーエコノミー」という言葉をよく耳にしませんか?「エコ関連ね...」というところまでは想像がつくものの、説明せよと言われたら言葉につまってしまいます。
今回はサーキュラーエコノミーとは何か、そして、その具合例をご説明します。また、サーキュラーエコノミーを推進するために、世界や日本でどのような取り組みがされているのか見ていきましょう。
サーキュラーエコノミーとは?
サーキュラーエコノミー(Circular Economy)とは、「資源や製品を繰り返し使うことで環境への負担を減らそう」+「経済発展と新しい雇用を生み出そう」という2つの軸を持った新しい経済の在り方です。
単に、資源の消費量やゴミの廃棄量を減らすだけでは足りず、経済発展を併せて遂げるという点がポイントです。
この反対にあるのがリニアエコノミー(Linear Economy)といいます。"Linear"は「直線の」という意味で、「作って→使って→捨てる」という従来の一方通行モデルを指します。
およそ250年前、資本主義社会が始まってから、私たちはリニアエコノミーの中で生産、消費、そして廃棄を繰り返してきました。その結果が、資源・エネルギーの枯渇、地球温暖化などの環境破壊、またはそれに由来する経済成長の停滞でした。
サーキュラーエコノミーが浸透した社会とは?
もう少し詳しくサーキュラーエコノミーについて説明しているのが、エレン・マッカーサー財団が示した以下の図です。
図 The Butterfly Diagram: Visualising the Circular Economy Ellen Macarthur Foundation
なんだか難しそうな図ですね...。ということで、この図のポイントを以下のようにまとめました。
ポイント①
青いサークル=自然に還らない製品や素材のサイクル
緑のサイクル=自然に還る製品や素材のサイクル
右の青いサークルが鉄やプラスチックといった自然に還らない製品や素材のサイクル(技術サイクル)です。一方、左の緑のサークルは木材や綿といった自然に還る製品や素材のサイクル(自然サイクル)です。
ポイント②
サークルが小さいほど、環境負荷が少なくコストパフォーマンスが〇!
サークルが小さければ小さいほど、製品の価値をそのまま残していることになります。つまり、内側のサークルほど環境負荷が少なくコストパフォーマンスが良い循環です。
一番内側に位置している「シェアサービス」は最も優先されるべきアクションであり、逆に一番外側に位置している「リサイクル」は最終手段というわけです。
ポイント③
開発・製造段階で各サイクルにあったデザインを取り入れることが必要!
新たに作り出される製品は、それぞれのステージにあった性能を備えたデザインである必要があります。例えば、古着として使われるためには、何年も切れるような丈夫なデザイン、あるいは、修理のしやすいようなデザインが求められます。
参考 The Butterfly Diagram: Visualising the Circular Economy :Ellen Macarthur Foundation
サーキュラーエコノミー具体例
具体例① パワードリルのシェアリング
パワードリルが捨てられるまでの平均使用時間はなんと13分だけだとか...。確かに、使用頻度は高くないけれど、いざというときにないと困るものは周りにたくさんありますよね。
カナダ・トロントにある「Tronto Tool Library」は年会費を払うことで、会員はDIYやリノベーションに必要な道具を借りることができます。
また、道具の貸し出しにとどまらず、Tronto Tool Libraryはデザインや知識が集まるハブとしての役割を担い、また、現地の若者たちにトレーニングの機会を提供しています。
写真:UnsplashのEugen Strが撮影した写真
具体例② パッケージの再利用
TerraCycleが運営しているLoopはこれからのパッケージの在り方を変えるシステムになるかもしれません。
TerraCycleは大手企業を含む数々の企業と契約し、これら企業の製品をTerraCycle専用の容器にいれ、消費者へ届け、使用後は空の容器を消費者から回収しています。そして、その容器を洗浄し再利用するというシステムです。
Loopは日本にも上陸していて、関東地域を中心としたAEONでLoopの容器に入った製品を購入し、使い終わったら容器を返却することができます。
参考 Reuse – rethinking packaging :Ellen Macarthur Foundation
サーキュラーエコノミー×ファッション 世界の動き
世界はサーキュラーエコノミーの実現に向けて動きだしています。中でも大きな舵を切ったのはフランスです。
2022年1月より、「廃棄禁止及びサーキュラーエコノミーに関する法律」の中で、ブランドが売れ残った衣類や靴を埋め立て・焼却することを禁止しています。売れ残りを廃棄する代わりに、ブランドはそれらの衣類を寄付・再利用・リサイクルすることが求められています。
そのほかにも、同法律では、製品の環境・社会への影響に関する情報を消費者へ提供することをブランドに義務づけています。例えば、この情報の中には、リサイクル素材がどれほど含まれているか、製品の予想寿命や環境・社会への負荷を測定したスコア表が含まれます。
参考 FRENCH LAW ON FIGHTING WASTE AND ON THE CIRCULAR ECONOMYEM:Refashion
サーキュラーエコノミー×ファッション 日本の動き
一方、日本ではどのような動きがあるのでしょうか。
現在、ペットボトルや家電製品のリサイクルに関する法律はあるものの、衣類のリサイクルに関する法律は存在しません。しかし、動き出そうとしていることは事実です。
大きな取り組みとしては、環境省とアパレル関連企業11社からなる「ファッションと環境に関する企業コンソーシアム」が設立されたことです。このコンソーシアムは、大きく分けて「ファッションロス・ゼロ」と「50年カーボンニュートラル」という2つのビジョンの実現を目標にしています。
このコンソーシアムには、アシックス、東レ、H&Mジャパン、日本環境設計などの企業が参加しています。
参考 環境省と繊維ファッション企業 廃棄ゼロへ官民で連携 : 繊研新聞 (senken.co.jp)
まとめ
資源使用量・廃棄を減らし環境負荷を下げることに加えて、経済発展を目指す新しい経済の在り方がサーキュラーエコノミーです。
トレンドセッターであるヨーロッパの国々がサーキュラーエコノミーを実現するため、法整備に乗り出しており、また、多くの企業がこの新しい経済に沿ったビジネスモデルへと変換し始めています。