ファッション業界は石油業界に続き2番目に環境を汚染している産業と言われています。今回は、ファッション業界が今後解決していかなければいけない問題とは何か表にまとめてみました。
本記事では、各問題の概要しか触れていませんが、今後詳しい記事を追加していこうと思います。
ファッション業界 環境・社会問題まとめ表
衣類が「生産→販売→消費→廃棄」という流れの中で、どのような問題があるか以下の通り表にまとめました。ここでは「水」「ゴミ」「汚染」「社会」という4つのカテゴリーで12の問題を紹介しています。
水問題 | ゴミ | 汚染 | 社会 | |
生産 | ① 水の大量使用 | ② 製造過程で出る端切れ | ④ 農薬の使用 | ⑧ 児童労働 |
販売 | ② 売れ残り品の廃棄 | |||
消費 | ⑫ 洗濯時の水使用 | ⑥ マイクロプラスチック | ||
廃棄 | ③ 家庭からの廃棄衣類 | ⑦ 生分解性ではない衣類 |
① 水の大量使用
WWF(World Wide Fund for Nature)によると、1枚のコットンTシャツを作るために2,720ℓの水が必要だと言われています。この量は、湯船30杯分に相当します。
さらにショッキングなことに、WWFによると、世界人口の3分の2は毎年少なくとも1か月間水不足に陥っており、また、このまま何も対策をせずにいた場合、2030年までに世界人口の半分が深刻な水不足に直面する可能性があるそうです。
この水不足の大きな原因を作っているのが、ファッション産業だと言われています。
参考 How Your T-Shirt Can Make a Difference:WWF
② 製造・販売過程で廃棄される布や衣類
衣類のゴミは消費者が着れなくなった服だけではありません。服の型を裁断する際に生まれる切れ端やショップの売れ残りで処分される衣類は廃棄物全体の約2%になると言われています。
どんなに注意深く一枚の布から服の型をとっても、100mの内30mほどは裁断くずとなってしまいます。
また、日本では売れ残ったとみられる15億着もの新品衣類が焼却処分されています。
参考 15億着の”売れ残り服” 多くが廃棄される現実...その衝撃の現場を取材!:ガイアの夜明け
③ 家庭からの衣類廃棄
毎年日本では家庭から50.8万トンもの衣類がゴミへ出されています。そのうち95%にあたる約48.30万トンは埋め立てや焼却処分されています。
また、寄付として集められた古着も最終的に行き着く寄付先などで問題となっているケースがあります。例えば、先進諸国からアフリカへ送られた古着は現地で売られ、その古着ビジネスの勢いにより、現地の繊維産業が衰退しています。ガーナでは1975年から2000年までに80%もの繊維衣類に関わる雇用が減っているとの調査結果もあります。
参考 衣料廃棄物について考える :kokusen.go.jp
「世界中の善意がアフリカの産業を殺している」古着リサイクルに秘められた不都合な真実: PRESIDENT Online
④ 農薬の使用
全世界で使用されている殺虫剤の16%はコットンの栽培のために使用されていると言われています。また、私たちが普段着ている綿製品の約99%は農薬が大量に使われた綿花から作られていると言われています。
コットンの栽培時の農薬の使用により、毎年7,700万人の方が中毒死や健康被害にあっているという報告もあります。
⑤ 製造や輸送時のCO2の排出
原材料の調達から製造段階までで排出されるCO2は9,500万トン/年にもなります。これは日本全体で排出されているCO2の約8.3%にあたります。
また、1着あたりのCO2排出量はおよそ25.5kgで、これは500mlのペットボトルを255本製造するときに排出されるCO2量に匹敵します。
参考 SUSTAINABLE FASHION これからのファッションを持続可能に:環境省
⑥ マイクロプラスチック
マイクロプラスチックとは5mm以下の粉砕されたプラスチックのことを言います。ポリエステルやナイロンなど化学繊維で作られた衣類は洗濯をするたびに、繊維が抜け落ち、処理工場のろ過システムをもすり抜けて、海や川に放出されてしまいます。
マイクロプラスチックは空気や水、魚介類等に含まれており、私たちは1年間でヘルメット1つ分ものプラスチックを摂取していることになるそうです。
参考 \ 驚愕 / 1週間でクレジットカード2枚?私たちが食べるプラスチックの量 : 国際環境NGOグリーンピース
⑦ 生分解性ではない衣類
現在、供給されている衣類の60%はポリエステルやナイロンなどの化学繊維からできています。100%コットンの服は分解されるまで数か月程度ですが、化学繊維から作られた服が完全に分解されるまでに200年かかると言われています。
⑧ 児童労働
世界中、特に、アフリカや南アジアでは子供たちが低賃金や劣悪な環境で労働している現実があります。縫製工場やコットン畑は昨今の低価格衣類の生産のため、より安い労働力を求めています。また、コットン畑では収穫時にコットンが傷つくのを避けるために、大人より小さな手を持つ子供を雇うことを好む農家もいます。
ILO(International Labor Organization)によると、子供全体の11%にあたる1億7000万人もの子供たちが、ファッション業界を含むあらゆる業界で労働をしているそうです。
参考 Child labour in the fashion supply chain:UNICEF
⑨ 劣悪環境での労働
2013年4月、バングラディッシュの首都ダッカで、5つの縫製工場が入っていたビルが倒壊し、1132人が亡くなるという悲劇がありました。この倒壊は違法に増築が重ねられた結果でした。
途上国の多くの労働者たちは週7日、一日14‐16時間働いています。また、ピークの時には、ブランドの納期に間に合わせるために夜中の2時や3時まで働くこともあるという苛酷な労働環境です。
参考 Working conditions :SustainYourStyle
⑩ 動物虐待
セーターを作るのに欠かせないウール。羊から毛を刈るだけだから、残酷ではないと思うかもしれません。しかし、現状はイメージよりもずっと残虐です。
大量生産・大量消費が当たり前となったファッション業界では、短期間で大量のウールを作り出すことが求められるようになりました。その結果、1頭1頭を丁寧に扱うことが難しくなり、皮ごと一緒に刈り取る、羊の首が折れてしまうほどの暴力をふるなど目も当てられないような残虐な行為がまかり通っているのが現状です。
参考 People for the Ethical Treatment of Animals (PETA)
⑪ 国内産業の衰退
最近買った洋服の中にどれぐらいの「Made in Japan」がありますか?よほど意識して日本製を買わない限り、クローゼットの中に「Made in Japan」はほとんどないと思います。
実は、1990年にはアパレルの国産比率は半分以上でした。しかし、生産が人件費の安い途上国へと流れたために、2014年時点では国産比率は3%にまで落ちています。
参考 「日本製3%」で沈むアパレル工場が生き残る道 :東洋経済オンライン
⑫ 洗濯時の水使用
きれい好きで知られる日本は他の国より圧倒的に洗濯の回数が多いという調査結果があります。年間で平均して520回洗濯機を回しているそうです。2番目に多いアメリカの289回という数字をみたら、以下に日本人が洗濯機を回しているかがわかります。
まとめ
ファッション業界には様々な環境・社会問題があります。どれ一つをとっても簡単に解決できるものはありません。また、現在すべての問題をクリアしている服はおそらく存在しないでしょう。
だからこそ、高い服・安い服関係なくひとつひとつの服を大切に長く着る努力をしていかなければいないと思っています。