繊維の特徴を知って、賢く選ぶ!第4弾です。
今回は寒い季節には欠かせない、動物の毛から作られる「獣毛」の特徴や環境負荷を見ていきます!
繊維の中の「獣毛」の位置
獣毛は動物繊維に分類されます。獣毛は主に、羊・山羊・ラクダ・ウサギなどの毛が使用されています。今回は獣毛の中から、「羊毛」「カシミヤ」「アルパカ」の特徴と環境負荷についてみていきます。
羊毛(ウール)
セーターについているタグに「ウール」と表示があったら、羊からとれた毛を使ったセーターを意味します。
S. Hermann / F. RichterによるPixabayからの画像
まずは、特徴を見ていきましょう。
特徴
① 熱伝導率が低い
冬に温かいのはもちろん、サマーウールを使えば夏でも涼しく過ごせる繊維です。
② 吸放湿性がある
ウールにはキューティクルのような鱗があり、この鱗は湿気を吸い取ったり、放出する機能果たします。そのため、適切な水分量を保ってくれます。
③ 型崩れやシワになりにくい
弾力性・記憶形状性があるためです。
④ 燃えにくい
燃えずに、焦げて異臭を放ちます。
⑤ 色落ちしにくい
化学繊維と異なり色落ちしにくいので、他の衣類と洗っても色移りしません。
次にデメリットです。
デメリット
① 毛羽立ちしやすく、毛玉になりやすい
② 伸びやすい
③ 虫の食害に注意が必要
ウールは伸縮性があるため、洗濯や干し方によっては伸びやすい繊維です。
カシミヤ
カシミヤは中国やモンゴル、イランに生息しているカシミヤ山羊の毛からとれる繊維です。
特徴
① 滑らかな肌触り
繊維が細く柔らかいので、ウールと違いチクチク感がありません。
② 保温性に優れている
寒い環境で育つカシミヤなので、まとっている毛は保温性抜群です。
③ 型崩れしにくい
④ 吸放湿性がある
次にデメリットです。
デメリット
① 毛羽立ちしやすく、毛玉になりやすい
② 撥水性が弱く、水が付いたところがシミになりやすい
③ 虫の食害に注意が必要
また、1頭からたくさんの毛を刈れません。1着の服を作るためには、4~5頭のカシミヤが必要と言われています。
アルパカ
アルパカは南米原産のラクダの仲間です。
特徴
① 滑らかな質感
② 保温性に優れている
アルパカの毛は空洞になっているので、軽いのにとても温かいです。「ウールの7倍温かい」と言われているそうです。
③ 丈夫で毛玉ができづらい
お手入れが頻繁にいりません。また、毛玉ができづらいため長く使うことができます。
④ 汚れにくい
適度な油分を含むので、水溶性の汚れを弾いてくれる。
次にデメリットです。
デメリット
① 洗って水に濡れた状態で少し独特のにおいがする
② 虫の食害に注意が必要
獣毛の環境に優しい点/問題点
1.使用後は自然に還る
2.カシミヤの大量生産化により砂漠化を引き起こしている
現在はユニクロなどのファストファッションでもカシミヤを購入できるようになりました。昨今、カシミヤ製品の需要が増えており、カシミヤの頭数は増えています。それにより、カシミヤを放牧しているモンゴル草原などで砂漠化が問題になっています。
3.動物への残虐行為
毛を刈り取る際に、作業員が電動クリッパーで深い傷をおわせる等、動物に対する残虐行為がいくつも報告されています。
下のビデオは実際にアルパカが毛を刈り取られている映像です。(ショッキングな場面もあるので、苦手な方は視聴を避けてください。)
参考 People for the Ethical Treatment of Animals(PETA)
まとめ
獣毛は機能的にとても優れた繊維です。一方で、その環境負荷やアニマルウェルフェアの観点からは優秀とは言えない点が多くあります。
それでも、私自身化学繊維でできたコートとウールからできたコートが天と地ほど温かさに違いあることを身をもって実感しています。なので、獣毛からできた衣類を買うのをやめましょうとはとても言えません。しかし、大切なのことは、品質の良いものを買って長く使うことです。決して、ワンシーズンだけ着れればいいという感覚で買っていいものではないと思っています。